地球は大きなゴミ箱

「地球は大きなゴミ箱だ」

彼はそう言った。
出かける時は決まって、靴を履き、タバコに火をつけ、家を出る。

時間におわれるでもなく彼は堂々とタバコを吸いながら道を歩く。

「もし君に時間があるのなら家を出る前にゆっくり吸うといい。」

次の日から彼は家を出る前に腰をかけゆっくりタバコを嗜むことにした。

そして彼は家を出る際にタバコに火をつける。

【ホメオスタシス(恒常性維持機能)】暑くなったら人は汗をかき体温を下げる、怪我をしたらカサブタができしばらくすると怪我が治る。
人の体は今ある状態を無意識のうちに維持しようとする。

この機能のおかげで私たちは日々生きていくことが出来る。

彼もまた、タバコのホメオスタシスに取り憑かれていた。
靴を履き、タバコに火をつけ、家を出る。
彼が何日も何日も繰り返すことによって身体に記憶されたホメオスタシス。

ある日いつものようにタバコの吸殻を道端にすてる彼に見かた私は
「家では吸ったタバコを灰皿に捨てるのに、家の外では路上に捨てるのか」

「地球は大きなゴミ箱だ。」

タバコの火種を踏みながら彼はどこか寂しそうにそう言った。

「地球が誕生してからさまざまな種が生まれた。
今現在僕たちがこうして暮らしている時間もこの46億年という大きな歳月の中のほんの刹那の出来事であって地球から見た僕の人生は、僕にとって今のタバコと同じぐらい短い。
そんなシケモクのような人生を歩んでる僕が、地球1つになにか影響を与えることは出来ない。
僕が地球にとってのタバコなら、僕にとって地球は灰皿であって、僕が地球にとってなんの価値もないゴミだとしたら、僕にとって地球はとてつもなく大きいゴミ箱にしか過ぎない。

僕の行いはただゴミをゴミ箱に捨てたのと同じくらい当たり前のことさ。
君が僕の行いを咎めるっていうんだったら君は明日からゴミを捨ててはいけないよ。君がどこに捨てようとゴミは地球というゴミ箱から出られないのだから。」

彼にとって私たち人間が決めたルールなどゴミ箱の中で縄張り争いをしている虫たちと同じことであり、守る義務などないのだろう。

それでもゴミ箱にゴミを入れ続けたらいつかゴミ箱から溢れてしまう。
彼というゴミが地球というゴミ箱の容量を少なくしていることには変わりはない。

近い将来彼には地球から出て行ってもらうことにした。

そんな水曜日の夜。



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